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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

この半年とか

書けてなかったです。いやちょこちょこ書いては居たんですが完成してないっていう感じ。いやーーー流石にちょっと、疲れた。例えるなら燃料無くなっても止める訳にいかずバッテリで動いてた、みたいな感じ。骨身に疲れが浸みたって実感。

ピクに中途半端にUPしてた魔人幼馴染の小話の続きを書いてます。美しさについては魔界医師>秋せつら>浪蘭幻十って認識。原作がそんな感じかと。いやどうだろ先生とせんべえ屋はあれか=に>が乗っかってるヤツ。変換できないけど。

幻十かわいいかわいい。普通に抜け目ない感じでさらりとお土産買ってきちゃうイメージ。別に取り入るつもりもないけどまあ、お近づきの印に…っていうね。

 

 * * *

 高い空はまだ白く、名残の星がひとつ、ふたつと消える頃。
 その空に負けじと伸びるビル群の合間に漂う朝靄が、何処から落ちてきたか重なった枯葉を濡らし、凍るように白く見せる。夜通し騒ぎうろつく輩もふと途切れた。そんな晩秋の魔界都市の朝だ。
 そこを音もなく踏みしめ進む、何処までも暗いインバネスの影があった。

 浪蘭幻十。

 柔らかく優美に流れる癖のある髪に風が遊ぶのをそのままに、かつては秋家とこの街の封印、覇権を競い死闘を繰り広げた浪蘭家の最後の当主は、まだ日の上がらぬ白い魔界都市を行く。まるで人の目に触れてはならぬ禁忌を弄ぶ、暁の黒天使の道行だ。
 何時の間にか浪蘭幻十の足先はすり減った石畳の上だった。
 朝の訪れぬ街。永劫の暁。
 不思議に捻じ曲げられたガス灯が美しい影を石畳に落とす。何時までも、何時来ても暗い街並みを浪蘭幻十は流れる様に行った。見えるものは、木戸の向こうの青白い光、閉め切った窓から漏れる七色の光だ。
 ここは高田馬場・魔法街。
 今も尚、神智の真理を求める学者や術師の怪しげな呟きが満ちる街。
 
 浪蘭幻十は足を止めた。確かめる様に視線が流れた先は七色の水を滴らせる排水口だ。それから今にも崩れそうな掘立小屋を見て、木戸の横にある粘土板に美しい指を伸ばした。

「どなたさま」

 開いた木戸の奥、蟠る闇を払う様な金の髪がふわり、横だけをつい、と結い上げた少女がひとり立っていた。艶やかな夜でしつらえた黒いドレスに、透き通るほどの白い肌。
 人形娘は、蒼い瞳に来客者の姿を映すと「まあ、浪蘭の」と首を傾げた。

「しばらくお出かけになると聞いていましたのよ」
「ええ。確かに出かけていましたが一昨日に戻りました」
「あら、そんなに経っていたのかしら」

 ついさっき聞いたと思っておりましたのに。そう言ってころころと可憐な声で幻十に笑んだ。

「かの国ははいかがでしたの?」
「とても。とても素晴らしいところでした」

 美しく、記憶の傷に今尚濡れて美しく。永遠の不具が愛おしい。
 詩の一節を朗読するかのような来客の声に、蒼い瞳を瞼に閉じて浸みるように「そう」とひと言。

「みてみたい」
「……そのひと欠片でも。お気に召していただけるだろうか」 

 インバネスの裾から伸びた美しい指先に、するり絡んだ白金色のチェーンは糸のような三本を繊細に編み上げたもの。その先には灯る様に揺れる蒼を悠久に閉じ込めた雫。少女の金の髪をそっと除けながら、微かな音を立て幻十の指が少女の首にそれを着けた。

「お似合いだ」
「……何故」
「偶然見つけましてね。これの持ち主を僕は知っている」
「……浪蘭の」

 浪蘭の主の慧眼は何処まで見通すのか。一族随一とは彼の父の評判であったが、その子もまた名を継ぐか。「恐ろしい、浪蘭の者よ」と呟いた声は重く軋んで幻十に問うた。
 浪蘭の、若き当主よ何を見た?
 問われ、幻十はただ笑んだ。

「連れて行けと泣くものですから」

 僕はもう、しがない古道具屋の店主ですよ。そしてこれは貴女の物だ。そう囁いてもう一度笑んで見せた幻十の透く様な金茶の瞳の色を見て、もう二度と会う事は無いと思っていたそれに手を触れて、静かに目を閉じてから可憐な声が「……僥倖」と幻十に言った。

 * * *