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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

「し」と「じ」について

「し」と「じ」です。何かと言うといろはうたのあれです。

あさきゆめみし ゑひもせす』

あさいゆめをみていたようだ よってもいないのに

『あさきゆめみじ ゑひもせす』

あさきゆめなどみるまいよ もうようこともないだろう

 

どちらが正しいとか未だ不明らしいです。ただとてもふるいうたなんですよね。で、どちらが個人的に好きかというと『じ』のほうだなあという話です。「浅き夢など、みるまいよ」と真教皇に呟かれた日にゃもう五体投地してしまいそうです。むうさま!教皇さまが!!!

ずっと書きたくてかけてない話があるのでメモしておこうと思います。

 

***

 

聖戦が終戦を迎え、女神勝利が確定したわけですが、女神と神々は青銅の世(人の世)をリセットします。つまり歴史を神話まで遡り、聖戦の記憶を地上から消す決断をします。全ての記憶・記録から。長く聖域に、聖戦に、88の星座に縛られていた魂から。

そうして、リセットされた世は、聖戦の無い青銅の世を改めて紡ぎ始めました。女神の地上降臨もありません。当然聖域も、聖戦も無い。

 

一人の青年がいます。ごく普通の国に孤児として、施設で、後に親の兄弟だという養父を得て、普通に育ち成人しました。勉学に勤しみ大学に通い、院へ進みました。先行は民俗学です。

この青年には長い事悩みと言うか、秘密がありました。幼い頃から見続けている夢と、左腕の痣です。夢は、濡れるような滴るような闇から始まります。焦燥と動悸、恐怖、そして深い諦念。幼い頃は夜泣きが多く、母を困らせていたという。その夢は青年が育つにつれて様々な風景を青年に見せていきます。夢の中で、焦燥ははれる事は無く、恐怖は慣れに塗り替えられました。諦念が己の生命を賭けさせて。動悸はやがて死にました。そんな夢を何度も繰り返しながら10を過ぎたころ『壊れた白い石の柱が立ち並ぶ遺跡の写真』を見たことがきっかけに、そこに行きたい、行かなければという思いが強くなっていきます。行こうとして五度、家を飛び出し施設の人や養父を嘆かせたこともありました。

それから十数年。

青年はやっと、思い続けていた場所を訪れます。バックパックを背に、いつの間にか肩まで伸びた黒い髪を適当にくくり、着古したジーンズにtシャツ姿で、空まで続きそうな石段を、ただ眺めていました。

ここは神話の跡、白い白亜の建築物が崩れ落ち、ただ静かに佇む海外の遺跡です。遠い遠い神代に絶対的な信仰を集めた、神々の跡。

ここの神話によると世は3つに区別されます。神々と人が共生していた黄金時代、両者に齟齬が、争いが生まれた白銀時代、そして神々と人が別れた青銅時代。来る前に調べ上げた情報は持ち歩いているPCと、電源が不自由で結局はノートに書き連ね、青年は暫くをここで過ごすことに決めました。

神とはなんだったのか。

白銀時代に人が滅ぼされた理由は。

何故、神々は青銅の世を人に与えたのか。

国内を歩き見聞を拾い集め、電源のある場所でそれらを纏め自宅に送る。そうしてひと息をつけると遺跡に来ては石段を数段上がったところに佇んで上る陽を、沈む陽をみているのでした。

その夕暮れに、青年は夢を見ます。ここに来てから暫く見ていなかったあの夢です。滴るような闇でした。揺れるのは松明の灯りでしょうか。松脂が燃える匂いがして、青年はふらつく目元を押さえて立ち上がりました。

消えた?何が。

誰だ?何を。

行かねば!

どこに。と問う間もなく、ここを上がらなければならない焦燥に居てもたってもいられません。とにかく、何かが追ってくるような、何かを見なければならないような、失う?何を、何を失ったのだろう。

まだ夕暮れの筈の辺りは暗く。夢の中の様に闇でした。肌を濡らす闇。黒い血の様に生ぬるく据えた、闇。

どれくらい時間がたったのでしょうか。息も絶え絶えに、膝が震えてもうたってもいられない状態の青年が、最後の一段を上がりきった時、そこに誰かが立っていたのです。

 

***

 

まあ、その誰かは誰なのか大方の予想はつくかと思うんですが、芸術家がいいかなって思っています。この人は丘の上から風景を眺めながら、見えている風景とは違う景色を描いています。それこそ濡れたような漆黒のキャンバス、雷が地を割り割くキャンバス。そしてただ赤く、闇の様に黒い赤のキャンバス。

年は、どうしよう。