千一夜2[シオン ムウ]
尻たたき…尻たたき…。ちょっと真剣に書きたいネタをごそごそ書いております。ていうかこのネタ好きだな自分ってあきれてますが…11月めがけて書いてます。生きてますよというお知らせ代わりにちらっとUP
(´_ゝ`)………。
だいじょうぶ!だいじょうぶこれからだよ!!これあkらががっとすすむからね!!!
と、明日の自分に言い聞かせておきたいと思います…うおお…打ち損じなおせって話です…
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教皇シオンはただ笑んでいる。弟子は既に一日を終え、しどけない様子で寝台に上がり本でも開いていただろうか。許諾を待たず仕切り戸を過ぎた師を目で追う弟子の耳に届いた衣擦れは、さらり。師の肩から上衣が滑り落ちた音だ。
「お前が言い出した事」
「それは」
「約定を容易く違える等」
寝台の横に置かれた重量のある衣装箱は、古いながらも繊細な細工が施された逸品。先代の宮の主、つまりこの師が置いてから遂に動かされる事無くそこにあった。上には丁寧に織られた敷物が敷かれ灯りがひとつ朱に揺れている。それに照らされ色付くのは寝台の敷布と蟠る毛布、装丁が解けそうな古い本が数冊と弟子が身に付けている単の夜着。そこに散る幾筋の髪の色は蜜色の金だ。すと伸ばされた指先が弟子の長い髪をひと筋取ると、慣れぬ感触に怯む弟子の耳元に寄った唇が「不実を良しと育てた覚えは無いぞ」と囁いた。
これで五度目の夜であった。
寝台に極近く師を迎える夜であった。触れずの距離。しかし師の声は隔て等無く届く距離だ。13年の後に突然訪れた、弟子にとっては身が縮む思いがする距離だった。
女神の父と女神自身の願いで成った聖域復活。それは即ち幼い頃に死に別れた親と子を、教え半ばで幼い弟子を手放さねばならなかった老いた師とその弟子を、そして一度は敵として対峙した逆賊の教皇と黄金を再会させる事となる。子にとって養父は師となり統治者となり死者となり、十三年。二百五十の年月を信仰に捧げた者には一瞬の間であっただろうか。養い子が声を枯らし身を細め泣き慕い、やがて諦めるには充分の年月を経て親は冥界の先鋒となり、命に代えても守れと教えたこの宮を、開けよと言った。
「…許せぬか」
来訪の夜の数だけ聞いた。
13年前の出来事も聖戦までの聖域の混乱も、逆賊を装う事となったのも引いてはこの私の落ち度が発端であると。教皇を討つ迄に双子座を追い詰めた。女神不在の空白を招いた。統率を欠いた聖域に非常を強いた。聖戦を前に黄道の半数が女神に反し、死した。一時を己と共に逆賊へ堕ちた者達も。全て私の。
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