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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

身心〔ムウ シオン〕

Rになる小話の冒頭をストレス解消にフライング!誕生日小話が若干煮詰まったので…

春だし(*´Д`*)ラヴラヴがほしいいいいいい!

 

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 常夜の明かりがぽつぽつと聖域中に灯り暫く。師の元へ向う弟子の腕にはこの冬を無事に越えた越冬の酒と肴が数種類。最近は一族の里に顔を出した白羊宮の主を迎える各家の家長が引きとめようと躍起になっているらしく、そう簡単には開放してくれなくなっていた。

「我が家の娘もこの年で15。あと2年もすれば」
「何を言う。家の娘は今18。花の盛りでございますよ」

 その様な事をさり気なく、しかし何かに託けて笑いに紛れながらも言って来るのだから全く困ったもの。気軽に行けなくなってしまったとムウは小さく溜息を吐いた。
 聖域に上がった者は女神の御子、聖戦の女神勝利の礎となるのが定めであれば一族の婚姻の対象に等なった事は無かった。一度聖域に上がれば婚姻等とは無縁、いち家系を持つ事も無く命を終える。そういう不問律がしかし今回は。聖戦を終結に導いた当代であり、我等一族より出でた黄道一の宮、つい最近までは修復の女神の御技を持った唯一であった者。何よりも我等が長の最後の弟子で一族の上方、女神の一の近侍教皇にまでに上り詰めたあの方の唯一の弟子が生きてある。それが久しくこうして里に顔を出し、なまじ戦士の身姿を備えた柔らかき美丈夫なものだから年頃の娘を持つ家が黙っていられる訳が無い。その娘にしても、今までを隠れる様に細々と暮らしていた環境から、今では家々が集まり心強い我が一族よと思う所の聖域の雄の登場に、胸を躍らせ頬を染めるのは致し方ないだろう。そしてその状況はしっかりと一族の里からの時節の便りに認められて、彼の師にも届いてはいるのだった。

 さて、弟子が「遅くなりまして…」と師の元へ顔を出した時、奥の間の主は何時もの様に長椅子に身を休ませながら手には何やら便箋めいた物を持っていた。呼びかけに視線を上げて「ああ」とひと言。「遅かったな」と問われ「申し訳もございません。只今すぐに」と返事を返した。ちらり。師が持つ紙は草の繊維を丁寧に漉し、春の色目に花びらを織り込んだ上質。現在は一族に長と呼ばれる者はいないがその空いた籍はもう貴方様にしか務まらぬと言うのが一族の総意なのだろう。里からの通信なのだろうと弟子は直ぐに目星を付けた。何が書かれてあるのかは分からぬが邪魔をしてはならぬと心得て、晩酌の用意に取り掛かった。