女神の一週間〔沙織 黄金 青銅 シオン〕
あああああ色々濃いい感じで大変な師走ですね!
悔しいので教皇猊下にも忙しくなってもらいたい。やつあたりです。のちよーフライングだだっと打ち!
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昨日は確かに無かった物であると教皇シオンは小さく首を傾げた。教皇の間と女神神殿へ至る参道の入口、つまり己が座する聖座の背後に何やら鉢植えが置いてあるのだ。
「…これ、魚座よ」
聖域の、花だとか草木だとかこういった物はこの者とでも思っているらしい教皇シオンは、まずはじめに本日が登庁日であった双魚宮の主に問うた。
「何でございましょう」
「これはまた、お前が此処に置いたのか」
問われた魚座はくるりと曲線を描く金の髪をふわりと揺らし、はて、とひと言。「私めの仕業ではございません」と言った。
「しかし、緑の少ない聖域に、この季節でございますから」
観葉植物の緑は目にも優しく、常緑樹の葉の香りは空気も清浄にすると思われますね、と魚座が言うものだから、そう言うものではあるのだろうかと思った教皇シオンは「…そうか」と呟きそれっきり。この数日は鉢植えの事をすっかり心から消しやってしまったのである。
深夜と言うべき時刻に愛弟子の宮より戻った教皇シオンは新たな違和感にふと視線を流した。その新たな違和感の出どころは女神神殿へ伸びる参道の。
「………。」
何故だか白い。何が白いのかと言うと、常緑樹の葉が、である。小さく首を傾げた教皇シオンは己の背に従い歩く可愛い弟子に問うた。
「あれは常緑樹ではなかったか」
問われた弟子もまた首を傾げて「はい、その様に」と素直に返す。
「白くなっているが、枯れたのか」
「いえ、あれは」
御前を失礼致しますと呟いて鉢植に近付いた弟子は左右上下を見定めて「雪が積もった様です」と言うのだ。
「室内に雪など。昔から降らぬものと聞くよ」
「私もこの師より家内に雨雪が降る等、お教え頂いた事はございません」
はて面妖な事、と呟く師に「しかし趣き深く、儚げに美しいもの…」と可愛い弟子が言うから、そうか、これがそう和むのであれば良いのだろうと思う教皇シオンは「片付けましょうか」と問う弟子に「美しいならそれで。火急の事でもあるまいよ」と応えてそれっきり。すっかり頭から消し去ってしまったのである。
この時期を師走と言う東の国もあるくらいである。その国ではないが教皇シオンもまたご他聞に漏れず忙しかったのだ。だから今朝になるまですっかり忘れていたのである。それを責める事が出来る者など、教皇自身だけであろう。というか、365日の毎日、我が主、我が神への祭事や各界への施策手配、聖域の施政に忙しく異教徒の政などに気を取られている場合ではなかったのだ。
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