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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

兄弟〔瞬 カノン〕

 城戸邸には聖闘士と呼ばれる者が4人いる。星矢、瞬、氷河の青銅聖闘士と、88の聖闘士の上方黄道12宮のひとつである双子座の聖闘士のカノンである。青銅の3人は城戸光政の実子ではあるので今は亡き父親の家に住んでいるといったところだろうか。聖戦を終え己の処遇を考え始めた青銅達に沙織が勧めた事でもあった。本来ならば聖域か己の師の元で暮らすのが聖闘士の慣例であり、初めのうちは「過ぎたる寵愛はご自重くださいませ」等と地上における女神の代行・聖域の教皇にはお小言を貰っていた沙織だが見事に聞き流し今に至る。

 双子座の聖闘士であるカノンは聖域の交々は兄であるサガに任せ今は御主女神の守護を務める為、片時も沙織の傍を離れる事無く控えている。こちらも沙織の強い要望で実現したのであるがやはり教皇に言わせると「ご自身のお身内を大切にするあまりの過ぎたるお仕出かし」となる訳だが「貴方も随分と己の養い子には甘いと聞いておりますよ」と応酬しながら今に至る。只今聖域は平和ですと言ったところだろうか。

 という訳で青銅の3人と黄金のひとりが同じ屋根の下に暮らし始めたのだが、カノンは他の者には必要以上に姿を見せる事は無い。現世の身分である財団の総帥として世界を飛び回る沙織の背にひっそりと気配を消して控える様子は居ると思い探さねば見つけられない程の見事さなのだった。そのカノンが今、瞬の目の前にマグカップを片手に立っているのである。

「…なにしてるんだ」

 照明の消えた城戸邸のリビングで外を見ている瞬にカノンから声を掛けた。これは滅多に無い事である。ついそうしてしまったのはこの時間に佇む瞬の様子が沈んでいたからだろう。午前2時。明日は休みとはいえいつもの彼らならとっくに寝ている時間である。呼ばれた瞬は驚いた様に肩を震わせ振り向いて「…カノン」と言った。

「カノンこそ何をしているの」

「おれは別に。何か飲み物はないかと思って出てきただけだ」

 そっか。ぽつりと呟いて視線を外に戻す瞬につられカノンも外を見ると葉が落ちた晩秋の庭を月が明るく照らしていた。「何かあったのか」と問うと暫くの間の後、今日はお母さんの命日なのだと瞬が言う。

「…約束をしている訳じゃないんだけど、この日はいつも兄さんと過ごしていたから」

 瞬の言葉にカノンはふと首を傾げた。当代の青銅の多数は確か御主女神の現世での養父である城戸光政の子だと聞いている。しかし瞬が兄さんと呼ぶのは母を同じくするあの男、不死鳥の聖衣を纏う一輝と言ったか。ひとつ所に留まらず聖戦後も気付くと姿を消していた、あの。

「…ほら」

「…カノン」

「温まる」

 カノンから受け取ったマグカップの中身は白い液体で甘い匂いがする。

「もう一つ入れてくるから、少し付き合えよ」

 ふと笑んでリビングを後に、カノンはキッチンへ向った。