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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

師弟:3〔カミュ 氷河 青銅一軍〕

* * *

 

 聖戦を終え、体中の怪我も癒えた頃、青銅の皆は己の進路を決めなくてはならない、言わば岐路に立っていた。しかし鍛錬と戦いに明け暮れた彼らは義務教育でさえまともに受けてはいないのだ。高校ならばそれこそ夜間や通信だってある。大検に受かれば晴れて大学にも進めるが、すっ飛ばしてしまった義務教育はさてどうしたら良いのだろう。これで未来を好きに選べといわれても十代半ばの彼らにとって中々に過酷な条件ではなかろうか。

「聖闘士を辞める気はねえよ」

「うん。それは僕も同じ」

「これからもお嬢さんを、アテナをお守りしてくのは変わりない」

 城戸邸のリビングで足首まで埋まりそうな毛足の長いラグに座り思い思いにクッションを抱き寄せながら話し込んでいるのは青銅の3人、星矢、瞬、氷河である。ちなみに紫龍は当然の様に五老峰の老師の下へ戻り、一輝は何時の間にかいなくなっていた。「兄さんだって僕と同じ気持ちだよ。聖闘士を辞めるなんて考えられない」とは弟の談である。「氷河は師の元へは戻らないのか?」と星矢が言った。

「…俺が戻るのならば、シベリアだが…」

「12宮へは?」

 白羊宮だって師弟で住んでいるしと続ける瞬に氷河は首を振った。

「ならば瞬は処女宮にいくか?」

「…そう言う星矢は人馬宮じゃないか。…ていうか」

「俺ら本当にあれを継ぐのか?」

「…継いだらあそこに住むのかよ。クーラーも無さそう」

「クーラーどころか周囲にコンビニも無いな」

「あの人達もまだ二十代でしょ。暫く現役張れるよね?」

 衣は時代錯誤と言わざるを得ない古典舞台の衣装ともしくはフルアーマー、食は見たところ自給自足、住はクーラーも暖房も無さそうな遺跡…。12宮は無いな…と思った3人であった。

 女神アテナの今生の現身である城戸沙織は彼らが如何なる未来を望もうとも、完全な支援を決意していた。義務教育など如何様にもなりますよ、が彼女の言である。恐るべしグラード財団。とにかく、ゆっくり考えれば良いのですよ、わたくしの聖闘士を続けてくれるのは嬉しい限りですけれど、聖戦を終えこの一時を普通の少年の様に過ごすのも良い事、と城戸沙織は言った。

「すぐには答えは出ないな」

「そうだね」

「また近々話そうぜ。もう眠いし」

 立ち上がり伸びをして各自与えられた部屋へ向いながら「氷河明日はバイト?」と瞬が聞いてくる。ああ、と氷河が頷いた。

「明日が最後の日だ」

「やっぱり辞めるのか」

 勿体無いなーと口々に言う異母兄弟に苦笑いをしながら「長く続ける気は無かったんだ」と氷河が言う。たまたまグラード財団の傘下であるモデル事務所の人に声を掛けられてやってみただけの事、本当は新聞配達でもやろうかと思っていたところなのだ。「そういえば」と瞬が自分の部屋の前で足を止めた。

「何を贈るか決めた?」

「いや…。どれもいまいち決め手に欠けて」

 これからの時期なら暖かいマフラーやストールなんかがいいのだろうけれど、と瞬が笑う。しかしこの氷の師弟にはそれらは不要だろうなあと言ったところだろうか。お休みと挨拶を交わし自室に戻る二人を見送って氷河はふと溜息を吐いた。そろそろ決めてしまわなければ間に合わぬ、さてどうしたものか。

 

* * *