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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

聴取〔老師 カミュ〕

本日はしょようでやすみ。

何ていいますか、まあ所用です。

 

 

贈品の最後に「羨ましい」とぼやいていたカミュが、何と言うか、極意を聞きに教皇宮を訪ねようとする話。だだっと打ちです。

 

 * * *

 

 陽が地平に近付いて空を赤く染め始めた時刻、久しぶりに友と杯でも傾けようかと丘を上がってきた童虎は教皇宮の前に佇む人影を見つけはて、と首を傾げた。あの赤い髪は宝瓶宮の主ではあるまいか。今日明日は女神が聖域に新たに設けた休息日の筈。そんな日に教皇宮を訪ねる者がある等、何か火急の案件だろうかと童虎はその人影に「これカミュよ、いかがした」と声をかけた。

「…老師」

「シオンに用ならば共に行こうかの」

 わしも行くところじゃと手に持つ酒瓶をふらふらとカミュに見せにこりと人好きのする笑顔を見せた。その顔を見てほっとしたように「ご一緒しても?」とカミュがも小さく笑んだ。

「本日は休息日であろう?火急の案件かの?」

「…いえ。火急ではないのですが…。あの…執務中には、そぐわぬ事と」

 言い難そうなカミュの返答に、これはもしや私的な案件かと察する童虎である。ならばあまり詮索は出来ぬかと思い「そうか」とひと言返し暫く石畳に響く足音を聞いていた。

「…老師」

「なんだねカミュよ」

「師とは、何時まで師であり続ける事が出来るのでしょうか」

 ふと足を止め、童虎を見詰めたカミュは真摯に、だがどこか意気消沈した面持ちで童虎に問うた。細められた目がゆるりと揺れる様で、どうやらこれは本人にはかなり深刻な悩みの様だと童虎は思う。思えば宝瓶宮の主はこれまでに弟子を2人は育てているだろう。どういった運命か、1人は海皇の元へ行ってしまったようだが。ふむ、と童虎は考える。弟子を持つという事に関して黄道で言うならば、わしとカミュの他にムウが幼い者を手元に置いているがあの一族はちと特殊だ。

「…それについて、シオンに?」

「…ええ」

「…………。シオンに?」

 思わずもう一度確かめた童虎である。弟子育成について、シオンに。それは果たして適切なのだろうか。先程あの一族は特殊と断じたが、当代教皇と白羊宮の主の師弟関係等、その中でも輪をかけて特殊な分類だと童虎は常から思っている。あれは師弟の枠を逸脱した何かだ。いや、あのシオンは止めてけ、あれはちと違う。それをどう上手く言おうかと思案する童虎を更に動揺させたカミュの話の内容はこうだ。

 猊下と白羊宮の主の強固な絆、絶対的な師としての権威とそれを当然の様に受け入れる弟子の態度は、師弟として模範すべき理想の形であると私は常々思っていました。なんとも羨ましい。彼らには聖闘士としての師弟といった関係の他に修復と、聖域での上下関係とあとは一族という繋がりもあり、我等とは比べられぬものがありますが、それでも。猊下の弟子への教育、育成のあり方は大いにご教授いただきたいところだとその様に。

 カミュの話が進むにつれて己の顔色が醒めて行くのを童虎はじりじりと感じていた。カミュよ、それは違う。傍目にはそう見えているかも知れぬがお主のいう所の強固な絆は尋常ならぬ執着と言うべきだし、絶対的な権威は狂人的な偏愛、それを当然の様に受け入れている弟子に関してはその様に育てられた、言うなれば共依存。聖域を出てそれなりの機関に掛れば立派に何かしらの病名が付くだろう。

「…カミュよ」

「何でしょう」

「シオンのところに行く前に、わしに付き合わんか」

 これは友と呑むよりこちらを優先すべきである、別にあ奴と約束をしてい訳でなし。そう判断した童虎はカミュの肩をぱしぱしと二回叩きくるりと踵を返して今来た廊を夕日が見える丘へ戻るのだった。

 

 * * *