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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

憤慨〔シオン ムウ シオムウ〕

弟子にやきもちを焼かせたい。ええ、八つ当たりです。

本編では兄が弟をびしばし制裁していましたが、記述はまだですが、その後兄は力尽きて倒れます。ロス兄さんが双子兄を運ぼうとしますが弟が頑として渡しません。見かねた聖域の父・教皇猊下が兄を半ば強引に弟からひったくって寝台に運んでしまいました。

それを見ていたムウさま、その場では無表情ですが、実はおこですって小話…。

 

 * * *

 死に別れて13年。女神の奇跡とも呼ばれる復活を経て再会を果たした師弟には互いに越えねばならぬ事々があるのだった。

「嫌です」

「仕様があるまいよ」

「でも嫌です」

 ひた、とこの師の目を見詰めきっぱりとそう言った。ただの我侭ならばふいと顔を背けてしまうのに、この様な仕草の時は心底怒っている証拠だ。私は深い溜息を吐いた。

「お前の師は、育ての親は、聖域の長でもあるものを」

 どうして聞き分けぬ、20にもなろう者が、と肩を引き寄せ言い聞かせても今宵の我が養い子の憤りは引かぬまま。「どうして貴方があの様な事をせねばならぬのですか」と先程から数度目の言葉を口にするのであった。

「…ムウや」

「…はい」

「お前の師は親は、ここの何であるか」

 改めてそう問うと、く、と唇を噛んだ後「聖域の、父。教皇猊下とその様に」と全く不本意だと言わんばかりに答えてくれた。私は努めて慎重に「その通り」と頷いて「我は88の女神の聖闘士の父とも呼ばれるものなのだから、仕様があるまいよ」と我が養い子の頬をそそと撫でる。

「双子座の下がああまで取り乱しては、そうするしかなかったのだから」

「…射手座がいたではありませんか」

「双子座の下があれでは嫌だと」

「…老師もいたではありませんか」

「…ムウや」

「……。」

 名を呼びかけて今度は返事を返さずにふと目を反らしたところで、私はもう一度大きく溜息を吐きとうとう胸に抱き寄せる。真直ぐに伸びた髪を撫で、幼子を宥める様に抱き締め背を撫でてその額にそっと口付けた。

「…許せぬか」

 己からこの師を奪った双子座を。そう問うと私の養い子は「許せません。何時までも、許しません」と小さく呟いた。その声に、私は愛し子を抱く腕に思わず力を込めるのだ。公など知らぬ、私は最愛の者を奪われたのだから。そう言うかの様なこの素直な怒り。己は愛された者なのだと、疑いもしない真率が、私には何物にも代え難く胸に浸みる程愛おしい。

「…例えこの師が許しても、私は許しません」

 その声に私は「そうか」とひと言、この愛し子の髪に頬を寄せ、すまなんだとその耳にそっと呟いた。

 

 * * *