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黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

雪・月・花の月とたわごと〔羊一家誕〕

 

羊一家の誕生日!珍しく計画的に創作を進めた!進めた!二回言った!NDでは童虎さんが詩を口ずさんでいたので今回それをやってみました。

タイトルの雪月花は先日も書いたとおり白居易の寄殷協律からお借りしたのですが、漢詩いいですねー。そんな詳しくないんで調べつつなんですが。

今回シオン様の巻きで引用した月下独酌は四章まであるのですが下記の青いところ。

○一章

 花間一壺酒 獨酌無相親
 舉杯邀明月 對影成三人
 月既不解飲 影徒隨我身
 暫伴月將影 行樂須及春
 我歌月裴回 我舞影零亂
 醒時同交歡 醉後各分散
 永結無情遊 相期邈雲漢

 

○四章
 窮愁千萬端 美酒三百杯
 愁多酒雖少 酒傾愁不來
 所以知酒聖 酒酣心自開
 辭粟臥首陽 屡空飢顏回
 當代不樂飲 虚名安用哉
 蟹螯即金液 糟丘是蓬莱
 且須飲美酒 乘月醉高臺

 

李白さんの詩なんですがこの方酒仙って言われるくらい酒に関する詩を多く作っているそうです。言い訳しながら酒を喰らっていたって思うとなんか楽しいですねwというか、そういえば童虎さんってしょっちゅう酒を呑んでるイメージなんですけど何ででしょう。原作少年誌なんでそんなシーン出てきてないと思うんですが。でもそれが二次の面白さで、ファンの皆様の作り上げた楽しいイメージなんですよね( ´∀`)楽しいw

 

と言い訳で、本当は30日にUPしようかと思っていた月なんですが思っていたよりも早く出来たのでフライングしました。こちらにもサルベージ。来週忙しそうだし花も前倒し進捗したいなあ…。今回はpixivの更新は先にUPした雪にページをたしていくやり方にしてみました。雪以外は新着には出ないけどお祝いの気持ちは一杯ですよ!ちなみに本日28日は晶の誕生日でもありまして、ドリーム小説もいいかなと思ったんですけど、これは禁じ手ということでねたが尽きたらやりたい(笑)実は前々から通っていたすごいダイスキなサイト様のドリー武作品があるんです。このサイト様は蟹愛なのですがすごい楽しいのですよ(*´Д`*)ああいう作品書けたらいいなあ…。

 

 * * *

 

 花間 一壺の酒
 独り酌みて相親しむもの無し

 夜半の聖域をそう謳いながら通る者がいる。足取り軽くとんとんと12宮の丘の石段を飛ぶように上がる者は、二度の聖戦を女神勝利に導いた者、二度の聖戦を生きて越えた者と誉れも高い12聖宮7の宮、天秤宮の主であった。此度の聖戦において女神の施した術から解かれ、今、歳は18。全盛の身に戻った童虎である。見上げるとふっくらとした月。久しぶりに来た聖域は夜。夜勤の任に付く者以外に姿は無い、しんとした春の夜なのだった。

 月 既に飲むを解せず
 影 徒いたづららに我身に随ふ

 通り掛った白羊宮に微かな灯りを見た気がして童虎はふと足を止めた。ほんの数日前に名残の雪の降る廬山を訪れてくれたここの主は今、己の一族の長が代々書き連ねたという歴史書とでも言うべき書を読み始めたと言っていた。夢中になれば寝食忘れて道具を振るう困ったものよと、この前に友がぼやいておったが、大方書を読むのに夢中でこの月も知らぬのだろうか。そう思い見る月は艶々と地上に微笑みかけているのに、月下独酌もつまらぬものよ。息抜きがてら共に杯でも傾けよと童虎はことり、と扉を叩いた。

「老師」
「ムウよ」

 つい数日前に会ったばかりだが、元気かの?と問うとにこり。この一族はどうも見目麗しい全く困ったものよと童虎は思う。その友の弟子に月が見事じゃ、書を置いて少し付き合わんかのと誘うと「はい」とひと言。白羊宮の前庭に陣取り杯を2つと酒瓶をごとりと置いて再会を寿ぐ2人であった。

「時に、老師」
「何ぞ。ムウよ」

 只今我が師より書を借り受けて、読み進めておりましたところ、丁度261年の前の出来事を見つけましたと友の弟子が言う。ほうほうそれで?と先を促すと「どうやらこの月の終わり頃の、この日が、我が師の生まれた日であるようなのです」と続いた。

「誕生日か」
「誕生日…」

 知りませんとふと首を傾げる年若い知己を見て、ここ聖域に誕生日等祝う習慣は無いが、女神のおわす日本辺りではパーティなる宴席を設け、当人の生まれた事を寿ぎ祝うのだとぽつりぽつりと話してやるのだった。

「我が師が生まれた時には、一族が大層喜びに湧いた事、とありました」
「そうか。そうか。修復に黄道一の宮の星を持った者の誕生じゃ」

 一族もそれは大いに湧いたであろうと考えて、童虎は琥珀の瞳でふと目の前の友の弟子を見る。この者もまた修復と黄道の星を持って生まれたが、と。衰退の一途を辿る一族に、喜び湧く余裕などなかっただろうか。童虎の胸の内に兆した寂しさを知らず、友の弟子は「師にも何かしたいと思うのですが」と言った。

「私が生まれた時期には、老師には毎年、私が生まれた時の話をしていただきました」

 その言葉に童虎は、は、と目を見開いた。師父と死に別れ独り外地に籠もった子に、この心よ届けよと願いを込めて何度も繰り返した事を言っているのだ。聖戦を越え、共に甦った後も今までと同じく廬山にこの知己の訪れがあったばかり。律義者、親しい者よと嬉しく思ったばかりであった。気付いたかと呟くと、友の弟子が「書を読みやっと知りました」と返事を返し、すと立ち上がる。何かと見ていると一度宮の奥へ行き、戻った手には背を糸で縫いつけ括った書がひとつ。栞代わりに挟んだ紙のページを見ると日付とひと言「我の継」とあった。見開いたページにたった一行友の筆跡。それを童虎に見せながら「この日が私の生まれた日なのでしょう」と友の弟子が言う。

「師に何か。良い案は無いものでしょうか」
「そうさな…浮ついた事はやらぬ石頭であるからの」

 我の継とあるページを見詰め、ふと童虎に思いつくものがあった。そうだムウよ、これはお主しか出来ぬ事。その声に何でございましょうと更に近付く友の弟子にそっと呟いた童虎であった。

 

 *

 

 さて、月の宴より数日。この月の終わり近くの1日に、珍しく長く聖域に滞在している童虎は教皇宮に顔を出すと、三役で補佐を務める双子座の上が今ではすっかり着こなした法衣を纏い出迎えて「只今猊下には、来客がありまして」と言った。

猊下には、一族の方だとか」
「ほうほう。してどの様な話になっておるのかな」

 何、構わぬ、怒られたら其れ迄よと、悪怯れず教皇の間を覗いてみれば、訪ね来た一族の者に奏上を受けた友は、何やらに筆を滑らせている様子。時に笑み、時に涙を拭く一族の者に「それは、僥倖」「痛ましい事」と友の声がするのだ。その友がふとその筆を傍に控えた己の弟子に預け聖座を立つと、一族の者にすと跪き「よく訪ね来てくれた」と畏れ多さにただ畏まる一族の者の手を取った。

「長が亡くなり、一族を振り捨てた様に聖域に残った私に、思う事も多々あろうに、よく」
「その様な。我等こそ、何をしておるか不甲斐の無いとお叱りを受けねばならぬ身」

 我等一族はただただ御主女神の一族。貴方様は聖域に女神の子と捧げた者、女神支え聖域を支えるべき我等の、この不手際をあの者に頼り、ゆめゆめ身勝手な恨みを募らせること無かれとは、今は亡き長の言葉であると我が家の祖母も常々に。

 一族の者がそこで、ふと姿勢を正し低く身を持した。そうして一つ息を吸い「我等の長より言付かりました事、申し上げます」と言う。「謹みまして」とこちらも一族の礼をもって受ける友の姿は、200余年を遡り、いつか見た師に仕える1人の若者の懐かしい姿を童虎に彷彿とさせるのだった。

「此度の有様は全てこの長の失態、お前にいらぬ気苦労をさせる事、許せと」

 それが長が最後に祖母に託した貴方様への言葉とこの様に。200余年を経て届いた己の師の今際の言葉を聞き終えぬ内に、友の目に落ちる幾筋かの滴を童虎は見る。何ともやはり、美しいものよ我が友は、と見守っていたその時。この教皇の間に、この世に比べるもの等無い強大な神格が広がり、一同が皆聖座の奥の幾重にも薄絹の掛る廊を振り向いた。

「よく、ここまで訪ねて来てくれました」

 すす、と衣擦れの音高く進む白い人影。その声に法衣翻し教皇が臣下の礼を取るべき方はただ御一人。御主女神、当代アテナの御出座である。その場に伺候する教皇はじめ、7の宮含む補佐三役、己の師の傍に控えた1の宮が平伏す中、自身の守護を背後に連れた女神がそれ以上の礼を制しながら進み出て、突然の事にただ唖然とする教皇の一族の者に燦然と微笑んだ。

「私の一族の来訪を、どうして教えてくれないのです。シオン」
「はっ…」
「…畏ながら」

 まさか御主女神の御出座を賜るとはと、うろたえるのはこの一族の謁見を仕組んだ友の弟子。その申し開きを待たず女神は嬉しそうに、にこにこと己の一族の者に話し掛けている。「あの長にはわたしの教育係として様々な事を教えてもらったのですよ」等という話には、我が師の事とは言え知らなんだと友さえ驚いている。「スパルタでした」との女神の言葉に「…そうでございましょうとも」と長を知る者達から溜息と長への懐かしさ親しみのこもる返事が返るのだ。そうして様々に200余年も前の思い出話の中で、ふと女神がひと言「今思えば先の聖戦こそ、此度の聖戦の前哨であったのでしょう」と言った。

「冥界は次の聖戦勝利の礎にと、聖域の私の大切なもの等をまずは尽く滅せようとした」

 当時の激闘を思い出すかの様に閉じた目をやがて静かに開けると「そんな中よく此処まで一族の血を繋いでくれました、我が技をよく守ってくれました」と女神の声に労わりの思いがこもる。その言葉に涙で顔を上げられぬ、嗚咽で言葉も返せぬ有様の一族の者に代わり、ただ低頭し「ありがたき事、勿体無いお言葉を…」と友の声がするのだ。

「ここを第二の故郷と、前の様にまたいつでもここを訪ねてくださいね」

 この数百年の労など、今この時消え失せましてございます、早速長の墓前に報告をと、嗚咽に紛れ途切れ途切れに話す一族の者の声に深く頷いた女神が朗々と宣言をした。 

「私の眷属この一族よ。よくよく技極め行く末永く伝える事、改めて此処に託しましょう」

 女神の神託に平伏す一族にニケの杖が振るわれ、さらさらと祝福と加護が降り注ぐ。一時は途切れたかと思われた一族の繋がりも聖域との絆も、師を思う弟子の手配と、さらに図らずも御主女神の御出座を賜り改めてここに結ばれたかと、久しく見ることの無かった友の潤む瞳に心から笑んだ童虎であった。

 

 *

 

「お前の要らぬ節介であろうが」
「何を言う。よもや余計事などと、ムウを叱ってはおるまいな」

 一族再会の宴も果てた夜半、そのムウの先導で今夜の宿にと白羊宮へ戻る一族の者を見送った後の教皇宮の中庭で童虎は友の小言を貰っている。これは友の照れ隠しと見抜いている童虎は平然と杯を傾けた。

「あれは私に、不在の間の事々を書かぬのですかとしか言わなんだ。それが…」

 月の夜に「何かいい案は」と問われた童虎が言ったのは「この書を元に、昔語りに杯でも交わせば、それだけでシオンは嬉しいだろうよ」だったのだが、その昔語りの相手を私がしたとて己が利することばかりと考えた友の弟子が画策したのは「我が幼き弟子の誕生を、この書に是非に」だったそうだ。

「しかし小僧の生まれた日を己は知らぬと言って、知る者を呼ぶ事を許せとあの様に」
「はは、ムウもやりよる」

 しかしあれからほんの数日しか猶予が無かっただろうによく手配したものよと童虎は思う。殲滅を避けるため一族は離れて暮らす事としたのだと、いつかの酒の席でぽつりとこの友より聞いたことがある。市井に紛れ、或いは更に外地を求め。ムウはただひとつの手がかりを頼りに離れた一族のひとつを探し当てた。それは数年前に塔のある山脈の麓の市で己に幼子を託した男。その時何処から来たのかと問うとただすと北を指差したのだという。

「よく見つけたものよ」
「お主には過ぎた弟子よの」
「何を言うか」

 干した杯を突き出して「私が手ずから育てた養い子ならば当然」と言う友の目元が何時に無く綻んでいるのを童虎はすでに気付いている。素直に喜べないのは、己の知らぬところで己の弟子と知己が仲良く企んだ事が小憎らしいからだろう。それに笑み、ふと空を見ると月は艶々と輝いてまるで今日の出来事を祝福しているかの様だ。

 且しばらく須すべからく美酒を飲み
 月に乗じて高台に酔ふべし

 とくとくと友の杯に酒を注ぎひと言「生日快乐 」と言ってやると、ふと小さく首を傾げた友は「人にかこつけて、酒が飲みたいだけであろうが」と大いに笑うのだった。

 


2015.0330 月

 * * *