areaFree

黄金聖闘士二次創作とたまにたわごと。ほとんど腐。羊師弟と兄さん's傾向。最近メモ化。お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです。

憂悶〔ミロ カミュ とサガ〕

思いつくままにだだっと書いていた散文。蠍×水瓶注意。兄と弟の比較の文章はpixivの日々是好日で流用しちゃってますね・・・

 

 * * *

 こんなにも、思い悩んだことは未だかつて無いとミロは思った。

 考え続けて気がついたら空は白々と明け始めている。ああ、昨日もつらつらと考え続けていつの間にか夜が明けた。これでは寝た気がしないではないか。ぼんやりする頭で寝台を下りて窓辺に寄ると石段の上を見上げる。愛しいと思う君はこの上。数日前に凍土の国から戻った赤い貴石の髪を持つ、親友。
 始まりは幼い頃だった。が、今まではこんなにも思い詰めてはいなかった。本来が聖戦で死ぬ定めの聖闘士達に恋愛だの伴侶だの、一生を添い遂げる等、そういう思想は皆無に等しい。どうせ10代から20代で死んでゆくのだ。それまでを共に居られれば良いではないか。命の最後の時の何番目かに思い出す者がお互いであれば良いではないか。そう思っていた。今までは。
 しかし図らずも、もう一度生を与えられ、聖戦は終結を迎えた。確かにこれからは未だ聖域が迎えたことの無い事態が始まるという予感はあるが、そんなもの蓋を明けて見ねばわからぬ事。つまり、聖戦を終えて聖闘士達も己の心を省みる余裕が生まれてしまったのだ。これが良い事なのかどうかはわからぬが、思い詰め始めた心は止まらない。

 あまりにも考え過ぎてどうにもならなくなっていた。ぐるぐると回るだけで答えの出ない憂悶にいい加減飽いてきたミロは思い切って誰かに聞いてみる事にした。しかし内容が内容である。ここは信頼のおける、尚且つ口の堅い者がいい。さて、誰がいいだろう。

「珍しいな」

 あれはどうだ、あの者はと選びながら決め兼ねて、あまり来る事の無い教皇宮までやってきたら声を掛けられた。振り返るとそこにはサガの法衣姿がある。甦ってからこの所、双子の兄は執務に、弟は我等が御主女神アテナが片時も離さず。結果双児宮は主が不在のような有様だ。

「どうした?アイオロスなら今は人馬宮に戻っている」

 静かに穏やかに言う。復活し12聖宮が揃った今でもサガに会うことは滅多にない。思えば子供の頃などは気性が合ったのかアイオロスにばかり寄っていた。幼心にサガを凛々しく美しく清廉と思っていたが、それが却って近寄り難く感じていたのかも知れないとミロはつらつら考える。双児宮にあまり戻ってないのにも関わらず身なりは美しく、一寸の隙も無い。法衣の留め金は上まで留めて、装飾も省略せずにきっちり纏う。背を覆う金の髪は己の物より細く繊細で孵ったばかりの雛の様な明るい色。ふむ、とミロは改めてサガを見る。実は今でもこの人が真教皇を殺め、聖域を自分の意のままに動かしていたとはどうも思えないのだ。双子の弟とは爪の先まで同じみたいなのに纏う空気が全く違う。優美高尚はそのままだが、兄は幾重にも正しく仕舞い込まれた滅多に耳には出来ぬ美しく整えられた天上の音。弟は、絶妙な乱惰をもった、仕舞おうとして片付けきれぬ堕天の魅惑。そういえば。とミロは数日前に聞いた噂話を思い出した。

 女神を救い、女神の父に愛された聖域の英雄と名高い人馬宮の主は事の外、双子座を気に入っているらしい。

 アイオロスとサガ。この二人は当代12聖宮では一番の年嵩故に、自分が幼い頃などはこの二人がいつの時もまとめ役にあった記憶がある。アイオロスは闊達で明朗で気持ちの良い男。サガはその優美に戦わずして相手を屈服させる高尚さをもった男。そして何よりこの二人は強かった。サガの持つギャラクシアンエクスプロージョンは本来教皇の認可を得ないとならぬ、滅多に放てぬものだと聞いていた。アイオロスの技は見たことは無いがサガの技同様禁忌のもので、噂ではその矢から放たれる雷はアテナの父、天空神の雷霆にも劣らぬと言う。思えばこの二人は何時も一緒にいた。他の同僚とは年が離れていたこともあってか、鍛錬でも組手でも、そして相談事などはお互いしか居なかったのかもしれない。

 アイオロスがサガを、は有り得る。罪とその贖罪の重さに弱まるサガが己の意に反して地に膝をつかぬ様、アイオロスは何時でもサガに届くところに居る。いつでもサガを見ている。そんなふうにミロにはみえた。更に言えば、この二人が既にそういった関係であったとしても今更驚く事でもないような気もする。よし、聞いてみよう。ミロは覚悟を決めた。

「ちょっと良いだろうか」

 ミロが寄るとサガは少し驚いて、ふと笑んだ。内緒話の距離で、とても個人的な悩みなんだと打ち明けると、サガはそれならと自身が与えられている休み処にミロを招いたのだった。

 

続く

 * * *