ねくでめっ!:2〔童虎 以蔵 カルディナーレ シオン〕
兄さん’sの話を書いている合間につらつらと気分転換を。
やっぱり先代には小難しいというか、知的なやり取りをしてもらいたいなと思うんですよね。
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頭の良いおんしならわかるかのう・・・と慟哭していた童虎ですが、彼も長い詩をそらで言えてしまうので、頭は悪くないと思います。考えるのが面倒なタイプでしょうか。秋の夜長。月の大きな夜の聖域はひやりとした空気が漂っています。そんな12宮の丘の上で詩の宴が始まったようです。
童虎:牀前 月光を看る・・・
以蔵:・・詩仙か
見事な月を愛でながらふたり杯を傾けています。人肌程度のぬる燗で一杯。童虎の口もすべらかになってきました。
童虎:疑らくは是れ地上の霜かと
以蔵:ふむ。凛とした月光に相応しいな
童虎:頭を挙げて 山月を望み
ちらり、以蔵を見る童虎に笑みかけて最後の句を口にする以蔵です。
以蔵:頭を低れて 故郷を思ふ・・・
童虎:故郷にも長らく帰っておらなんだ
以蔵:あちらも、月の良い季節であろう
2人の声に惹かれて誰かが来たようです。
カルディナーレ:この肌寒いのに何をしているやら
以蔵:ふふ、魚座の麗人の登場だ
珍しい以蔵の軽口に童虎もちょっとびっくりです。
カル:・・・随分ご機嫌ではないか
良い酒の様だとカルディナーレは微笑んで、しな垂れかかる以蔵を支えて立ち上がらせました。まだ良いだろう、呑みすぎだ等と言い争ってますがなんだか楽しそうな2人です。
カル:これは、私が回収だ。・・・全く明日の約束を忘れているな?
ではな童虎、と挨拶を交わし石段を下りる2人とすれ違いながらシオンがやってきました。杯を上げて歓迎する童虎です。
シオン:そんなに呑んでいたか
童虎:・・・いや、どうじゃろうなあ
思わせぶりに答えた童虎にシオンもそれ以上気にせず、月を見上げます。200年後の聖戦で、青銅達の前に月を眷属の様に連れて現れた男となるシオンもこの時期はまだまだ月に気圧されてる様子です。そんな親友の様子に、童虎がふと、詩を口ずさみました。
童虎:・・・杯を挙げて明月を邀え
シオン:ああ、良い月だ
童虎から受け取った杯を月に挙げて月を呼ぶシオンに、春の詩を読みかけた童虎がぽつりと、おんしのことじゃと独りごちる秋の夜長です。
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