ねくでめっ!:1〔シオン デストール 〕
先代達には小難しい話をしてもらいたいなあ。とふと思ったので・・・
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宵の口。久し振りに積尸気の外を歩いていたデストールが自宮に帰るため1の宮を通り抜けようとしています。するとそこに憂い顔の宮主がいました。
デス:あらやだ。景気悪い顔だわねえ。
シオン:・・・通るなら、勝手に通るが良い。
デス:かわいくないわねえ。
いつに無くぶっきら棒な白羊宮の主の様子にデストールは思います。ああ、先日女神の悪戯で飛ばされ己の行く末を見せ付けられてからずっと、この坊やは機嫌が悪いのよねえと。
デス:何かあったんならこのおネエ様に言ってごらんなさい。ほらほら。
シオン:べ・・・別に何も無い。おいこら、そこに居座らないでくれ。
デス:まぁいいじゃないのぅ。いい物を手に入れたのよぅ。ほらほらどうぞ。
シオン:・・・日が沈まぬ内に酒などと・・・。
言いつつも、二人呑み始めます。デストールは呑むとますます陽気に、シオンはザルだといいと思います。
デス:帰還してから浮かない顔しちゃってぇ。ふふ、将来の教皇様が~。
シオン:もう本当に。その話はやめてくれ。未来等、これからどうなるか等誰にもわからぬのだから。
デス:ふふん~。坊やは非決定論者なのねぇ。
言われ、シオンがすと目を細めました。ほう・・・と言いたげな顔をしています。すい、と飲み干した杯にデストールが瑠璃色の酒をとくとくと注いでくれました。
シオン:己は己の意思でのみ、活動する。この権利はこれは全ての者に下されなければならない。
デス:ふふふ白羊の者らしい考え方ね。白羊宮は己の意思にのみ従う。
シオン:Marcu Maniliusか。真理だろう。
デス:物事には必ず原因があるわ。原因無しには何事も起こらないとして、その原因は必ずしも己の仕出かしの中にあるとは限らないわよ。
シオン:しかしその原因が意図する未来へと進まない事を選択できるはずだ。
デス:因果律の破れか。まぁこの前の私達の状況もそう言えるかしらね。でも変えちゃあ駄目って建前も存在するのよ。
シオン:親殺し。成り立たないという訳か。
デス:しかし他世界解釈って世界観ならどうかしら。あらゆる可能性の重ね合わせ。楽しいわね。
シオン:しかし同時に存在するとして、己以外の己を認識しないならば、無と同然ではないだろうか。
デス:我思う故に我あり。とことん白羊宮ね。
言葉遊びみたいにさらっとこういう話をするくらい黄金座は基礎知識豊富だといい。酒の匂いに惹かれていつの間にかいる童虎とオックスあたりがぼやいてればなおいい。
童虎:つまらぬ話をしているのう・・・。
オックス:ははは。お前の親友はインテリだなあ。
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